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外国籍エンジニア、どう育てる? ― 3つの育成事例と、現場エンジニアが語るリアル ―

2025年6月26日、株式会社アイエスエフネット主催のオンラインセミナー「外国籍エンジニア、どう育てる?」を開催しました。
少子高齢化による人材不足が深刻化する中、外国籍エンジニアの活用と育成に本格的に取り組む企業が増えています。

本セミナーでは、そうした社会背景を踏まえながら、200名以上の外国籍エンジニアを有するアイエスエフネットが実践している育成の取り組み、実際に活躍しているエンジニアのリアルな声、そして今後の人材戦略におけるヒントを共有しました。

本レポートでは、セミナーでお伝えした内容をもとに、外国籍エンジニアの活用・定着に役立つ視点や事例を、さらにわかりやすく整理していきます。

目次[非表示]

  1. 1.なぜ今、外国籍人材を活用するのか?
  2. 2.外国籍人材を雇用する5つのメリット
    1. 2.1.① 優秀なIT人材の確保
    2. 2.2.② グローバル対応力の強化
    3. 2.3.③ 組織ナレッジ・リテラシー向上
    4. 2.4.④ 多言語対応力の強化
    5. 2.5.⑤人材戦略としての優位性
  3. 3.バイリンガルエンジニア育成事例
    1. 3.1.事例① K.Cさん(香港出身)
    2. 3.2.事例② C.Rさん(フィリピン出身)
    3. 3.3.事例③ M.Fさん(イタリア出身)
  4. 4.外国籍エンジニアが語るリアル
    1. 4.1.現場のリアルな声を聞いてみよう
    2. 4.2.インタビュー登壇者プロフィール
    3. 4.3.入社当初、不安だったことと、その乗り越え方
    4. 4.4.成長実感を得られた瞬間
    5. 4.5.今後のキャリアと、理想の職場像
  5. 5.まとめ:外国籍エンジニアは育つ仕組みで活かせる
  6. 6.アイエスエフネットのバイリンガルエンジニア派遣サービス

なぜ今、外国籍人材を活用するのか?

セミナーの冒頭では、株式会社アイエスエフネットCC(Creative Careerpath)推進部の梅津より、日本の人材不足の現状と外国籍人材の重要性について説明しました。

日本では少子高齢化が進み、特に若手のIT人材が慢性的に不足しています。
経済産業省によると、2030年には最大79万人のIT人材が不足すると予測されており、企業の人材確保は年々厳しさを増しています。
出典:「IT 人材需給に関する調査」(経済産業省)

こうした背景の中、語学力と専門性を持つ外国籍エンジニアが新たな選択肢として注目されています。
実際、外国人労働者の数は2014年の約79万人から2023年には約204万人にまで増加しており、IT業界でも採用の動きが広がっています。

梅津は、「外国籍人材の活用は、やるかやらないかではなく、いつやるかの段階に入っている」と述べ、早期の取り組みが将来の競争力につながるとしました。

次章では、「企業が外国籍人材を受け入れることでどのようなメリットがあるのか?」について、5つの視点から具体的な価値を整理します。

外国籍人材を雇用する5つのメリット


① 優秀なIT人材の確保

日本国内では、若手の即戦力人材を採用することが年々難しくなっています。
そうした中で、外国籍エンジニアは高い専門スキルや学習意欲を持ち、自主的に動ける人材も多く見られます。
特に新卒層は、日本語や業務知識を短期間で習得するなど、柔軟な思考力と吸収力を発揮します。

② グローバル対応力の強化

アジアを中心に海外展開を進める企業では、現地とのコミュニケーションに課題を感じることが少なくありません。
現地文化や言語に理解がある外国籍エンジニアは、その橋渡し役として大きな役割を果たします。

③ 組織ナレッジ・リテラシー向上

多様な文化的背景を持つ人材が加わることで、チーム全体の視野や感度が自然と高まります。
日々のやり取りの中で「伝える力」が磨かれ、組織全体の学習効果やナレッジの質も向上します。

④ 多言語対応力の強化

英語だけでなく、中国語、韓国語、ベトナム語など、多言語対応ができる人材が多いのも外国籍エンジニアの強みです。
特に海外向けサポートや社内の多国籍化が進む現場において、大きな力となります。

⑤人材戦略としての優位性

日本人だけでは将来的に労働力が不足するのは明らかです。
早期に外国籍人材の受け入れ体制を整えることで、持続可能な組織づくりや採用競争力の確保につながります。

バイリンガルエンジニア育成事例

ここからは、外国籍エンジニアをどのように受け入れ、どのように戦力化していくのかを、実例をもとに具体的に見ていきます。
セミナーでは、アイエスエフネットの3つの育成・定着事例を紹介しました。
いずれのケースにも共通していたのは、「スキルの有無」ではなく、「成長する前提で設計された育成プロセス」が組み込まれていたことです。

事例① K.Cさん(香港出身)

K.Cさんは、社交性と吸収力が非常に高い方で、日本語はN2相当です。来日後はIT研修を経てネットワーク運用業務に従事しました。

初期配属となったN社では、未経験ながらも、現場での育成・成長を見越した業務設計を行っていました。
具体的には、手順が明確なマニュアルベースの作業からスタートし、ペア作業や定期的なOJTを通じて、業務内容とチーム文化の両方に早期に馴染めるように設計されていました。
また、タスク進捗をこまめに確認する体制も整っており、K.Cさんが「自分が役に立っている」と感じられる環境が用意されていました。

その後、A社のグローバルネットワーク運用プロジェクトにアサインされました。
海外(フィリピン)との障害対応や機器更新支援を担う中で、語学力と関係構築力を活かして信頼を獲得し、徐々に業務範囲と裁量が拡大しました。
現在はリーダーポジションでチームを牽引しています。

成功要因は以下の通りです

  • 採用時「育成の可能性が感じられる人物かどうか(人柄・柔軟性・語学力)」を評価したこと
  • 初期業務が「確実に成功体験を積める設計」になっていたこと(OJT・進捗確認・役割明確化)
  • 小さな成功を積み重ねながら、裁量・業務範囲・待遇を段階的に引き上げたこと
  • フィードバックや声かけを日常化し、「自分は必要とされている」と実感できる環境をつくったこと

こうした施策の積み重ねが、K.Cさんのポテンシャルを引き出し、早期定着と自律的な成長を実現しました。

事例② C.Rさん(フィリピン出身)

C.Rさんは、新卒で来日・入社したバイリンガルエンジニアです。
日本語は業務遂行に問題のないレベルで、英語はビジネスレベルです。
真面目で素直な性格と、丁寧な報連相が特長です。

初配属となったT社のユーザーサポートでは、問い合わせ対応やトラブルの一次切り分けを担当しました。
当初はIT業務未経験でしたが、現場の信頼を早期に獲得できました。

その背景には、アイエスエフネットの技術部門が事前設計した1on1支援体制がありました。
業務だけでなく、生活やメンタル面も含めた日々のコミュニケーションを通じて、不安の吸い上げと早期のフォローを徹底しました。
加えて、任される領域をスモールステップで拡大することで「評価されている感覚」や「任されている実感」を持ちやすい状況がつくられていました。

約2年後には、チーム進捗の管理やクライアント報告を担う管理ポジションへと成長しました。

成功要因は以下の通りです

  • 新卒という特性を理解した上で、技術部門が事前に伴走体制を整えていたこと
  • 不安やつまずきが起きても「安心して相談できる」心理的安全性を確保していたこと
  • 仕事の段階設計が明確で、本人が「自分の成長段階」を把握できるようになっていたこと
  • 成長に応じて業務領域と責任を拡大し、自然にリーダーシップへ移行できたこと

キャリア初期における自己効力感の積み上げと支援の可視化が、定着と飛躍に直結した好事例です。

事例③ M.Fさん(イタリア出身)

M.Fさんは、日本語N2・英語ビジネスレベルのバイリンガルエンジニアで、冷静かつ誠実な対応が持ち味です。
多国籍プロジェクトにも柔軟に対応し、安定した業務遂行力を発揮しています。

初期配属では、ドキュメント化と業務可視化が整った環境にアサインされました。
業務フローは手順ベースで明快に設計されており、立ち上がりがスムーズに進みました。
加えて、週次での定例フォローや、改善提案を歓迎する文化により、本人の業務理解や適応力が着実に深まりました。

さらに大きな要因は、「働く本人の生活変化に柔軟に寄り添うバックアップ体制」があったことです。
たとえば、家族の都合で急な一時帰国が必要になった際も、現場と本部で速やかに連携し、業務調整や体制補填を迅速に実行しました。
本人は「自分を大切にしてくれる職場」だと感じ、安心感を持って働き続けています。

成功要因は、以下の通りです

  • 初期業務の構造化と可視化により、業務適応のハードルを下げたこと
  • 定期的なフィードバックと対話機会により、不安を未然に解消できる環境を整えていたこと
  • ライフイベントへの理解と対応を「制度」ではなく「実務対応レベル」で実現したこと
  • 小さな信頼の積み重ねが、長期定着と高い業務成果につながったこと

派手な仕組みではなく、「基本を丁寧に積み重ねる育成」が、安心・信頼・活躍を生んだ典型例です。

外国籍エンジニアが語るリアル

現場のリアルな声を聞いてみよう

育成事例に加え、本セミナーでは、現場で活躍する外国籍エンジニアの方にもご登壇いただき、インタビュー形式でお話を伺いました。
企業側が想定している課題と、実際に現場で働く本人の感じていることの間には、少なからずギャップがあります。
だからこそ、現場のリアルな声に耳を傾けることが、より良い受け入れや育成のヒントになります。

今回のインタビューでは、外国籍エンジニアとして実際に現場で働く方に、以下の3つの観点からお話を伺いました。

1つ目は「入社当初の不安と、それをどう乗り越えたか」です。
言語の壁や文化の違い、業務への適応など、初期につまずきやすいポイントについて、実際にどのようなサポートが支えになったのかをお聞きしました。

2つ目は「成長実感を得られた瞬間」です。
任される業務が広がったことや、お客様からの感謝、社内での評価など、本人が「成長できた」と感じた具体的なエピソードを通じて、モチベーションの源泉を探ります。

3つ目は「目指すキャリアと今後の働き方」についてです。
中長期的にどのような役割を担いたいのか、どのような環境であれば安心して働き続けられるのかといった視点から、企業がどのように寄り添うべきかを考えます。

インタビュー登壇者プロフィール

W.Zさん
中国出身。
現在は株式会社アイエスエフネットにてITエンジニアとして勤務。
日本語・中国語・英語の3言語を活かし、製造業や貿易業を含む幅広い業種で業務経験を持つ。
IT業界には約9年前に転職し、以降はヘルプデスク、IT監視、システム検証、PCや周辺機器のサポートなど多岐にわたる業務を担当。
保有資格はLPIC、CCNA、Oracle Master、Security+、ITIL Foundationなど。
AWSやAzure、Intune、Active Directory、Zabbixなどのツールや環境にも精通している。

入社当初、不安だったことと、その乗り越え方

中途入社で、しかもIT未経験ということもあり、当初は「仕事がうまくできるだろうか」という不安がとても大きかったです。
最初に担当したのはヘルプデスク業務でしたが、マニュアルが整っていて、自分で読み込んで理解を深められる環境がありました。
さらに、わからないことがあってもすぐに先輩に相談できる雰囲気があり、皆さんとても丁寧にサポートしてくれました。
そうした日々の支援があったからこそ、安心して少しずつ業務に慣れていくことができました。

成長実感を得られた瞬間

お客様からの問い合わせに対し、自分一人で対応できたとき、「成長できた」と実感しました。
特に、やりとりの中でスムーズにコミュニケーションが取れたときは、自信にもつながりました。
それまでは常に先輩に確認しながら対応していたのが、自分の判断で動けるようになったことは、大きな達成感につながりました。

今後のキャリアと、理想の職場像

今後は、できればハイブリッド勤務のような柔軟な働き方をしながら、チームをまとめるリーダーとしての役割にも挑戦していきたいと思っています。
また、「お互いに助け合える環境」であることが、長く働くうえでとても大切だと感じています。
率直に意見や提案ができて、支え合えるチームであれば、外国籍であることに関係なく、誰もが安心して働き続けられると信じています。

まとめ:外国籍エンジニアは育つ仕組みで活かせる

今回のセミナーでは、外国籍バイリンガルエンジニアの雇用・育成・定着に関する実践的な
知見をご紹介しました。

まず、外国籍人材の活用には大きく5つのメリットがあります。

  • 優秀なIT人材の確保:スキルと意欲の高い若手人材を採用できる
  • グローバル対応力の強化:海外拠点との連携や多文化理解を支援
  • ナレッジ・リテラシーの向上:多様な視点がチームに刺激を与える
  • 多言語対応力の強化:英語をはじめとする多言語での対応が可能
  • 人材戦略上の優位性:人材難に対応するための先手として活用できる

加えて、実際の育成成功事例からは、単なる「個の力」だけでなく、企業側の受け入れ体制の設計がいかに重要かが見えてきました。

共通していたのは、以下の2点です。

  • 安心できる関係性の構築:1on1や丁寧な報連相による信頼醸成
  • 段階的な裁量移譲:スモールスタートから責任ある業務へと成長支援

外国籍エンジニアは、特別扱いが必要な存在ではありません。
設計と支援次第で、組織にとって大きな価値を発揮する戦力となります。

いきなり採用に踏み切るのが難しい場合でも、まずは派遣という形で受け入れることで、社内にノウハウを蓄積しながら、段階的に活用の幅を広げることが可能です。

本セミナーをオンデマンドで視聴されたい方はこちら


アイエスエフネットのバイリンガルエンジニア派遣サービス

アイエスエフネットでは、外国籍のバイリンガルITエンジニアを正社員として雇用し、以下の体制で一貫したご支援を行っています。

  • 全員正社員のプロパー人材によるご提案
  • 育成協業スキームと社内シニアによるスキルシェア
  • 参画後のバックアップ体制(生活・業務面を含む)
  • 多言語対応の24時間365日ヘルプデスク

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アイエスエフネット編集部
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